さかな 意匠法の改正について



 「意匠法等の一部を改正する法律案」 が国会で成立し、2006年6月7日に公布されました。


 それに伴い、公布から1年以内に意匠法の改正が施行される予定です。

 大まかな内容を ざっと知っていただくことを優先するため、大雑把ではありますが、改正点の説明をさせていただきます。

 正確で詳細な内容については改正法の条文などでご確認いただくか、特許庁にお尋ね下さい。



【今回の意匠法改正の概要】



(1) 意匠権の存続期間について


 意匠権の存続期間が登録日から20年になります。

 今までは、登録日から15年でしたので、5年間長くなることになります。


 尚、ここでいう存続期間というのは登録料(年金)を納付し続けて最大限権利を維持した場合の期間です。権利維持のための登録料を納付しなければ、存続期間の満了前に権利が消滅するのは従来通りです。



(2) 保護対象について


 情報家電等の操作画面のデザインも「物品の部分」の形状等として保護対象になります。

 初期画面に限られず、それ以外の画面も対象となるようです。




(3) 類似の判断基準について


 意匠の類似判断は需要者(消費者、取引業者)の視覚による美感に基づいて行うことを法文に明記して明確化するようです。


 今までは類似の判断主体(判断の基準となる人)が誰かについて、条文には明記されていませんでした。



(4) 関連意匠について


 以前より、デザインのバリエーションについては「関連意匠」として出願が認められていましたが、「関連意匠」の出願は、出願人がメインの意匠として選択した「本意匠」の出願と同じ日に出願する必要がありました。


 改正後は、「本意匠」の公報発行まで可能に成ります。


 つまり、バリエーションである「関連意匠」については、「本意匠」と同日に出願する必要が無く、「本意匠」が登録になって登録公報が発行される前であれば出願できるようになります。


 これについては個人的に大歓迎です。デザインのバリエーションというのは同じ時に一度にできる場合もありますが、改良や商品展開などによりデザインに変更を加えてバリエーションを作っていくことも多いからです。




(5) 部分意匠について


 物品の部品や部分のデザイン(部分意匠)については、それらの部品又は部分を含む「物品全体」の意匠と同日又はそれ以前に出願する必要がありましたが、改正後は「物品全体」の意匠の公報発行まで出願できるようになります。


 これも出願人としては助かります。物品全体について意匠登録出願をした後で、その一部を部分意匠として保護したくなる場合もあるからです。




(6) 秘密意匠について


 秘密意匠制度というのは、出願人の希望により、意匠登録になった後も一定期間 登録になった意匠の内容を公開せずに秘密の状態を保つことができる制度です。


 今までは秘密意匠の適用を受けるためには、出願と同日に秘密意匠の請求をする必要がありましたが、改正後は設定登録料(最初の登録料)の納付時にも請求できるようになります。


 出願後の諸事情で、秘密意匠にしたくなったような場合には便利ですね。




(7) 新規性喪失例外の証明書類の提出期限について


 発表などにより新規性を喪失した意匠でも、所定の「新規性喪失の例外」の手続きをすれば例外的に「新規性を喪失しなかった」として扱われることがあります。


 このような「新規性喪失の例外」の手続きのために証明書類を提出しなくてはならない場合があるのですが、その提出期限は今まで「出願から14日以内」でしたが、改正後は「出願から30日以内」になります。


 証明書類の提出に時間的な余裕ができるのは、手続きをする者としては助かります。



(8) その他


 保護の強化として、権利の「侵害」となる範囲を広くしたり、刑罰を厳しくしたりしています。



                 ☆              ☆


[関連事項と経験談]

(1)各地で「平成18年度意匠法等改正説明会」(無料)が開催されます。


 説明会ではテキストの配付も有るようなので、興味のある方はお近くで開催される説明会に行かれてはいかがでしょうか。

 改正会説明会については 特許庁のホームページ  をご覧下さい。


 もちろん私も行きます。他の会場はわかりませんが、大阪での改正法説明会はいつも大変混雑しますので、時間に余裕があれば少し早い目に会場に入ることをお勧めします。



(2) 今回の改正は、意匠法の改正が中心ですが、商標法、特許法、実用新案法、不正競争防止法についても改正があります。


 特に「商標法の改正」については、条文上は小さな改正ですが、「小売」「卸売」の業務が「役務」として認められ、小売業や卸売業の使用する商標が、「役務商標(サービスマーク)」として認められるようになるなど、実務上は大きな影響があります。


 デパートや、雑貨屋さんのように、色々な商品を販売していた小売店さんには朗報でしょう。


 この商標法の改正については、改正法の運用がもう少し具体的になった後に、私が発行している 商標関係のメルマガ

 「 『商標・サービスマーク 』 ど〜んと来い!(通称「商どん」)
 
 で説明しようと思っています。



(3)それにしても知的財産権関係の法律は、改正が多いですね。毎年のように何かの法律の改正があります。

 特許事務所や企業の知財部門の担当者も大変ですが、弁理士試験の受験生も覚える内容が変わってしまい大変ですね。


 特許庁編の改正法解説書などが発行されましたら、また紹介させていただきます。




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