理由は色々あるのですが、大きな理由は次の2点です。
(1) 個人事業や中小企業の役に立ちたい!
私は日本弁理士会の特許相談、大阪産業創造館の知的財産相談、地域の商工会や産業振興センター等の相談会、更には私の事務所がやっているメール相談や出張面談など数え切れないほど相談を担当しました(1,000件近いと思います)。
その中で気になったのが、多くの個人事業や中小企業(以下、便宜上「スモールビジネス」と呼びます) が知的財産権がらみで大企業に「やられっぱなし」になっている現状です。
特許,実用新案,意匠,商標などの知的財産権は「大企業のためだけ」に存在しているのではありません。
これらの知的財産制度は個人や小企業が活動する上でも有効で、資本や営業力の大きな大企業に対抗する大きな武器となります。
でも実際には、自分が手にすることができたはずの武器を逆に大企業に使われ、その武器に脅威を感じているスモールビジネスが少なくありません。
大きな原因は、知的財産権についての知識と意識が不足していることにあります。
「知的財産権」という言葉が普及した現在でも、知的財産権について「知らない」「法律のことは良くわからない」だけですませてしまっているスモールビジネスが多いのです。
更に相談で悩みを聞いていても、実に簡単なことに悩んでおられる方が多いです。
(そのような方は、アドバイスしてあげると、とても喜んでくれます。)
そこで、少しでも私の知識や経験をスモールビジネスの役に立てたいと思うように成りました。(これは私の使命だと考えています。)
(2) 大企業との関係より、スモールビジネスとの関係が好き!
私は一部上場の大企業に勤務していました。その時は特許事務所に仕事を依頼することも有りました。
又、他人の特許事務所に勤務していた時期もあります。このときは反対に大企業からの依頼を受けることがありました。
つまり大企業と特許事務所の関係を、両側の立場で経験したのですが、「大企業からの仕事はおもしろくない」と感じました。
もちろん大企業の発明は最先端の技術についての情報が多く、それ自体は興味が有るのですが、双方の「関係」があまり好きではありません。
全ての大企業がそうだとは思いませんが、多くの大企業は仕事を依頼する特許事務所を「外注先」又は「下請け」という感じでとらえているように思います。
特許事務所側からアドバイスをしても大企業は「余計なことはするな、いわれたことだけやれば良いのだ」という対応をすることが多いです。
大企業の気持ちは良くわかります。私も大企業にいるときは、特許事務所に対してそのように対応していました。
何故なら、大企業では依頼する前の段階で、社内の研究開発部門、知的財産部門、経営企画部門などで調査や検討を行い、必要と判断された案件(発明や商標など)について社内で合意を得て出願することを決定しているからです。
出願を依頼する時点で、すでに内容は「決定している」ので、特許事務所(ごとき)が口を挟むことは少ないのです。
そう、大企業の依頼を受ける特許事務所は「やれ」と言われたことを迅速にきちんとやれば良いのです。(少なくとも私はそのように思っています。)
それに対してスモールビジネスからのご依頼は「一緒に作っていく」という感じがします。アドバイスを求められ、一緒に内容を更に良いものにしていくのは楽しくてやりがいを感じます。
最初は極めて狭い範囲で考えられていた内容が、一緒に考えることにより広い範囲の内容になることも多いです。
又、相談や手続きの後に 本当に喜んでいただけるのも嬉しいです。
登録できた後に、涙ぐんで握手してこられるお客さんもおられます。
知的財産の仕事をしていて、お客さんにこんなに喜んでもらえるというのは、本当に弁理士冥利に尽きます。
こんなに素晴らしい経験をすると、事務的な大企業からの依頼は感激が少なくて魅力を感じ無くなってきました。
そういうことで昨年(2003年)より、大企業や大学 からのご依頼はお断りし、スモールビジネスからの依頼に集中することにしました。
一般には、特許事務所は
「敷居が高い」、「相談しにくい」、「弁理士って怖そう」、「すごく高い料金を請求されそう」
というイメージを持っておられる方が多いようですが、そのようなイメージを払拭して、「スモールビジネスに対して親切で丁寧な特許事務所」としてお役に立ちたいと考えています。
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弁理士 西川 幸慶 |
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