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[ 営業秘密(えいぎょうひみつ)] (その2) |
[営業秘密(えいぎょうひみつ)] (その2) 営業秘密とは 「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの」 のことでしたね。 (1) 前回は、「営業秘密」って何?という点について説明しました。 今回は、(その2)として 営業秘密の管理について簡単に説明します。 只、「営業秘密の管理」と言っても、実際にすべきことは管理多岐にわたりますし、レベルも色々なので詳しく説明することができません。 したがって、基本的,一般的なことのみ説明させていただきます。 最終的には秘密の重要度などを考慮して各企業が、どの程度まで管理するのか決めることとなります。参考程度にご覧下さい。 (2) 守るべき営業秘密は? まず守りたい営業秘密は何かを考える必要があります。 秘密管理のためには、費用も人材もかかります。全ての情報を営業秘密として守ろうというのは負担が大きすぎますし、現実的ではありません。 最低限守るべき営業秘密は、当然会社にとって「大切な秘密」です。 言い換えれば「自社の強みの源となっている情報」、「他社に漏れるとダメージが大きい情報」です。 そこで、どの情報を営業秘密として管理するかを決めて下さい。 (3) 管理体制 「担当者まかせ」、「現場まかせ」の 場当たり的な管理ではなく、会社として きちんと営業秘密の管理体制を作る必要があります。営業秘密の保護は会社が一丸となって取り組むべきことだからです。 そのために営業秘密の管理を行う組織を作り、情報管理の責任者も決めます。 そして、営業秘密に関する規程を作成し、それに基づいて運用します。 (4) 教育 営業秘密管理に関する教育も大切です。 入社時や、プロジェクトを開始する際などに、営業秘密の意味、秘密にすべき理由、不正競争防止法による保護の内容、営業秘密を漏洩した場合の処罰などを教育し、意識を高めます。 正社員だけでなく、営業秘密に触れる機会のある派遣社員やパート社員などに対しても教育をすべきです。彼らから情報が流出することも有るからです。 会社のパソコンを使って、業務外の私信メールを送受信することや、関係のないウエブサイトを閲覧することなどは制限すべきですが、そのようなことも教育すると良いです。 (5) チェック体制・報告体制 作成した秘密保持規定が きちんと運用されていることをチェックできる体制を作る必要があります。規定に反した現場での勝手な取り扱いを許すべきではありません。 又、営業秘密の漏洩が発生した場合や、発生しそうな時は、すぐに管理者に報告連絡する体制も大切です。 これらは、せっかくの秘密保持規定が、形だけの「絵に描いた餅」とならないようにするためです。 場合や程度によっては、規定を守らない従業員に対して、警告や処罰などを行うこともあって良いと思います。 (何だか 独裁国家の秘密警察みたいで嫌な感じもしますが、秘密を守ることとは、それだけシビアなことなのです。) (6) 問題の再発防止 問題が生じたときは、事実関係を調べて、再発を防止するための措置をとります。 場合によっては、規定の改定や、教育へのフィードバックなどが必要となることもあると思います。 (7) 施設 営業秘密を管理する部屋への入退室については、制限します。 まず、客観的に関係者以外は立ち入り禁止であることがわかるような表示をしておくことが大切です。 入室の際には、それが許された者であることを確認できるようにしておきます。(必要なら、管理者や責任者の「立ち会い」を条件としても良いと思います。) 又、重要な秘密を保管している場合、いつ誰が部屋に入ったかを記録しておくとよいです。 (8) アクセスできる人の制限 予め決められた人だけが、秘密の情報にアクセスできるようにします。 たとえ役員でもアクセス権原のない人にはアクセスをさせません。 パソコンの場合、パスワードの設定や、定期的なパスワードの変更も重要です。 (9) 保管 鍵のかかるや保管庫などに管理して、その鍵もしっかり管理するべきです。 書類を机の上に出しておき、部屋に鍵だけを閉めて帰ったという場合は、裁判で「秘密に管理している」と認めてもらえない可能性があります。 又、書類やファイルには客観的に秘密書類で有ることがわかるように、「マル秘」,「社外秘」などの表示をしておきます。 秘密の重要度によって、保管の厳重度を変えても良いです。 インターネットなどのネットワークに接続されたパソコンは、ファイアウォール(外部からのアクセスを制御する手段)やウイルス対策ソフトなどが必要となります。 所定の場所以外への持ち出しについても厳しく管理すべきです。基本的には持ち出しを禁止し、どうしても持ち出しが必要な場合については、どのような手続きを経て認めるのかを決めておくと良いでしょう。 書類やメディア(CD−ROM等の記録媒体)だけでなくパソコン本体についても注意が必要です。従業員が自宅で仕事をするために会社からノートパソコンを持ち帰ろうとして、電車で忘れてしまったという笑えない話しも有ります。 (10) 廃棄処分 不要となった書類やメディアの破棄についても、注意が必要です。 どのように廃棄するか決めておくとよいです。(例えばシュレッダーで裁断,焼却など) 古くなったパソコンを捨てる場合も、消去したつもりでもハードディスクに情報が残っていることがあります。 最近ではデータを綺麗に消去してくれるサービスもあるらしいですが、パソコンからハードディスクを外して、破壊して物理的に使えなくするのも一つの手段です。 (11) 秘密保持契約 従業員に秘密保持義務が有ることを明確にするために、秘密保持契約をします。 個別の契約としても良いですのですが、就業規則や入社時の誓約書などに盛り込むこともできます。 秘密保持契約は一つである必要はありません。 基本的な秘密保持義務については入社時に契約し、秘密に関するプロジェクトに参加させる際や退職時に、別途、具体的な範囲(内容,時期など)を決めて契約をさせることが多いです。 又、企業間で提携してプロジェクトを進めるような場合は、相手の会社との間で秘密保持契約を行います。 ☆ ☆ [関連事項と経験談] (1) ジョークのような話しですが、パスワードを書いた付箋をパソコンに貼っていた会社が有ったそうです。 パスワードを忘れても、アクセスできるようにしていたのだと思いますが、これでは誰でもパスワードを知ることができるので、パスワードとしての意味が全くありません。 裁判でも そのような場合には不正競争防止法で保護すべき「営業秘密」として認められません。 一人の従業員の、軽率な行動で営業秘密の管理がダメになってしまうのですから怖いですね。 (2)私は昔、企業に勤務していましたが、退職する際に、上司から秘密保持の契約を求められました。 会社には当時 退職者に対して秘密保持契約をするような慣習はなく、上司が ちょっとした思いつきで作ったようでした。 契約書を見たところ 「勤務中に知り得た一切の情報を第三者に伝えてはならない。無期限。契約に反したらどのような処罰でも受ける。」 といったムチャクチャな内容でした。 もちろん私は 拒否しました。 (私がその守秘義務契約に応じたら、 「社員食堂のカレーライスは200円だった。」 ということを家族に話しただけで、契約違反として処罰されることになってしまいます(^_^;) ) 秘密保持契約をするのなら、秘密にする範囲(内容,時期など)を明確に すると共に合理的な内容にして、契約相手にも納得してもらえるようにしま しょう。 (3) 古いパソコンを捨てる際に、情報が漏洩しないようにハードディスクを破壊したことが何回か有ります。 金槌で「ガンッ」と叩けば 比較的容易に内部のディスクが割れます。割れたことは音でわかります。 でも、1台のハードディスク装置に複数枚のデイスクが入っていることも多いので、1回叩いて割れた音がしても、割れずに残っているデイスクがある可能性もあります。しつこいめに叩いた方が良いと思います。 更に気になるなら、分解してディスクの状態を確認してもよいでしょう。 (4) 今回、自分で説明をしていて強く思うのですが、「秘密の管理」というと どうしても「人間不信」が根底にあるような話しとなり、正直言って あまり気持ちのよい話しではありません。 でも、昨今のようにリストラ,転職,独立,副業,企業間コラボレーションなどが多くなると、秘密が漏洩してしまう可能性も高くなるので 避けられないのでしょうね。 |
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