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[ 金銭的請求権 (きんせんてき せいきゅうけん)] |
[ 金銭的請求権 (きんせんてき せいきゅうけん)] 商標出願してから商標登録を受けるまでの間に、その商標を無断で使っている人に対して、金銭の支払いを求めることができる権利のことです。 (1) 商標登録を受けるためには商標登録出願をしなくてはなりません。 審査を経て、設定登録されることにより商標権が発生します。 そして、商標権の効力は、設定登録日から発生します。 つまり、出願してから設定登録されるまでの期間は、まだ商標権は無い状態です。 そのため、設定登録前に商標権の行使、例えば商標を使用する人に対する差止請求や損害賠償請求をすることはできません。 (2) しかしながら、商標登録出願後、設定登録される前に第三者がその商標を模倣して使用することによって出願人が損失を被ることがあります。 ( 設定登録前に出願人が 出願した商標を広告や販売などに使用することがあり、設定登録前でも その商標に価値、すなわち「業務上の信用」が発生している場合があります。) (3) そこで商標法では、商標登録出願から設定登録までの間の業務上の損失を補填するために、商標登録出願人に金銭的請求権を認めています。 つまり、商標登録出願人は、その間に商標を使用した第三者に対して金銭の支払いを請求できるます。 支払を請求できるのは業務上の損失に相当する額です。 (4) 金銭的請求権が認められるためには、次の条件を満たす必要があります。 (A) 当然ながら、商標登録出願していること。 (B) 商標登録出願人は出願内容を記載した書面を提示して相手に警告すること。 (C) 警告後に相手がその商標を使用したこと。 (D) 警告した相手が使用したことによって出願人が業務上の損失を受けたこと。 (5) 出願しているのと同一の商標を、出願で指定した商品又はサービスについて使用している場合はもちろんですが、類似する範囲での使用(つまり類似する商標の使用や、類似する商品への使用など)も 対象となります。 (6) 金銭的請求権を行使できるのは、商標権の設定の登録後です。 出願された商標の全てが登録されるものではないことを配慮したためです。 たとえ出願後に警告をしていたとしても、その商標登録出願が放棄や取り下げなどにより、最終的に設定登録されなかった場合は、金銭的請求権は 初めから生じなかったものとして扱われます。 更に、一旦 設定登録された後でも、登録異議申立によって登録が取消された場合や、無効が確定して最初から登録が無かったとして扱われる場合、金銭的請求権も初めから生じなかったとして扱われます。 (7) 金銭的請求権には時効があります。 商標の設定登録から3年間行使しないときは消滅しますので御注意下さい。 ☆ ☆ [関連事項と経験談] (1) 金銭的請求権を行使した場合でも、設定登録後の使用に対して別途商標権の行使をすることができます。 金銭的請求権は、出願から商標権の設定の登録までの間の使用を対象とし、商標権は設定登録後の使用を対象とするからです。 (2) 商標登録出願をしてから、設定登録されるまでの具体的な期間は、審査の都合で一定していません。 只、一昔前に比べると早くなり、出願から半年程度で「登録査定謄本」が送られてくることが多いです。 (もちろん、出願から1年経過しても特許庁から何の連絡も無い場合もありますし、反対に出願から3ケ月程度で「登録査定謄本」が送られてくることも有ります。) 「金銭的請求権」は出願から設定登録までの期間における商標の保護を目的としているので、審査が早くなるほど利用される機会も少なくなっていくはずです。 (3) この「金銭的請求権」の制度は、法改正により平成12年より施行されています。 それ以前には、設定登録前の商標に対してこのような権利は認められていませんでした。 「マドリッド協定議定書」という商標の登録に関する条約のようなものがあり、この議定書に加盟する際に、議定書の求める要件をクリアするために、「金銭的請求権」を認める必要がありました。 「金銭的請求権」を認める法改正を行ったのは、いろいろな理由が有るのですが、この「マドリッド協定議定書」が一番 直接的で大きな理由となっています。 (4) 特許法でも特許(登録)前の発明に対する「補償金請求権」という権利が認められることがあります。 これは今回説明した「金銭的請求権」とよく似ていますが、違う点もあります。 この「補償金請求権」については また別に説明させていただく予定です。 |
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