「わかっちゃう! 知的財産用語 (特許,商標などの用語解説)」

さかな  わかっちゃう  知的財産用語
特許,商標,著作権 等に関する用語辞典 
さかな


ADR(エー・ディー・アール) 


 [ ADR(エー・ディー・アール)]


  裁判によらない紛争解決方法のことです。

 「Alternative Dispute Resolution」の頭文字をとって、ADRと呼ばれています。


(1) 紛争が生じた場合、その解決手段として考えられるのは裁判による解決です。

 しかしながら、裁判には時間や費用がかかるというデメリットがあります。

 裁判以外の紛争解決手段としてADRが有ります。


(2) ADRとしては、「調停」と「仲裁」が代表的な方法です。


 「調停」とは、中立な第三者である調停人に入ってもらい、調停人の示す解決案を検討する等して、紛争当事者間で和解をして紛争を解決する手続です。


 一方、「仲裁」は争っている当事者の合意に基づいて仲裁人に判断してもらい、当事者が仲裁人の判断に従うことにより紛争を解決する手続です。



(3) 特許,意匠,商標などの知的財産権に関する紛争については、日本知的財産仲裁センター  に調停又は仲裁を申し立て ることができます。


  この日本知的財産仲裁センターは、日本弁理士会と日本弁護士連合会が運営しているADR機関です



(4) 日本知的財産仲裁センターに調停を申し立てた場合、弁護士・弁理士各 1名が調停人となります。そして、調停人の意見や判断をもとに当事者が合意して和解すれば事件が解決します。


 調停の進行中に、当事者が調停による解決を望まない場合は「不調」となり調停での事件解決はしません。その場合は、裁判で争うことになることが多いと思います。


 その意味では、和解条件に納得がいかない当事者が、そのまま和解するのを嫌がって、「不調」にしてしまうということは考えられます。


 それでも、一度は客観的に双方の意見を確認し、その上で交渉できるという点で、存在意義は有ると思います。



(5) 日本知的財産仲裁センターに仲裁を申し立てた場合、弁護士及び弁理士を含む少なくとも3名が「仲裁人」となります。

 この場合、当事者は仲裁の判断に従うことを予め合意します。

 そして仲裁人が判断し、当事者はその判断に従わなくてはなりません。



               ☆                   ☆   

[関連事項と経験談]

(1) 欧米においてはADRはそれなりに利用されているようです。しかしながら、日本ではあまり利用されていません。


 ADRについてあまり知られていないことと、ADRに対する不安等があるのだと思います。


 まだまだ「裁判で白黒つける方が納得できるので良い」と考える人の方が圧倒的に多いようです。


(2)平成19年の5月までに「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律 (ADR法)」が施行されることになっています。

 ADR法が制定されると、法務大臣が民間のADR事業者の認証を行います(ADR認証制度)。これにより、ADRに対する信頼を高めて、ADRの利用促進を図るそうです。


 詳しくは「法務省大臣官房司法法制部司法法制課」に問い合わせば、教えてくれるそうです。
  (それにしても すごく長い部署名ですね(^^;) )


(3) 日本知的財産仲裁センターにおける調停・仲裁手続は裁判と違って非公開ですので、第三者に紛争の事実を知らずに解決できるというメリットも有ります。


(4) 「仲裁」というと「喧嘩の仲裁」を連想する人もおられるでしょうね。

 喧嘩している人の間に入って

 「まあまあ ここは一つ ワシの顔に免じて・・・・」

 みたいなイメージが 有ります。

 喧嘩の仲裁には強制力が無く、無視されたり、喧嘩の当事者から殴られてしまうようなことも有るかもしれません (^_^;)

 法律上の「仲裁」は 予め当事者間で仲裁の判断に従う合意があり、判断に強制力がある点で「喧嘩の仲裁」とは大きな違いが有ります。



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