わかっちゃう! 知的財産用語 特許,商標,著作権 等に関する用語辞典 |
オープンイノベーション |
オープンイノベーションとは、 自社技術と他社の技術を繋いで価値を創造するという考え方のことです。 (1) メーカーは技術的に優れた製品を生み出すために、研究・開発をしています。そして、得られた技術は自社の製品に活かすと共に、特許やノウハウなどにより保護してきました。 このように自社で研究・開発を行って、それにより得られた技術で自社製品を生み出すという「技術の自前主義」の考え方は、「クローズドイノベーション」と呼ばれます。 この「クローズドイノベーション」に対する考え方が、「オープンイノベーション」です。 (2) 「オープンイノベーション」は、他社や大学などと技術提携をすることにより、自社開発だけでは得られないメリットを得ようとします。 従来から特許発明のライセンスや、大学との協力などにより社外と技術提携することは行われていましたが、近年「オープンイノベーション」が更に注目されるようになってきました。 外国、特にアジア諸国の技術レベルが上がってきて技術の差別化をすることが難しくなってきことや、市場の変化が激しく次々と新製品を市場に提供する必要があることなども要因でしょう。 研究・開発には時間や費用がかかりますが、使える技術をうまく外部から導入できれば新しい製品を効率よく作ることができます。 また、自社の技術を他社に提供できれば、ライセンス料収益や共同開発による利益も得られます。 「オープンイノベーション」は、自社の技術と外部の技術とをうまく結びつけて、自社開発だけでは得にくい新たな価値を生み出すことを目指します。 ☆ ☆ [関連事項と経験談] まとまりのない雑感ですが、オープンイノベーションに関して思ったことを列記します。 (1) 開発した技術も新製品などの事業に活用できなければ、宝の持ち腐れとなってしまいます。全ての技術が自社製品に活かされるとは限らず、むしろ特許権を取得したものの全く使っていない発明をたくさんかかえている企業も多いと思います そのような技術も、オープンイノベーションにより脚光を浴びることもあるのでしょうね。 (2) 1社ではなく複数の会社や大学を巻き込むので「スタンダード」つまり「規格」を作りやすい環境になることを期待しています。 日本は欧米に比べて自分たちの技術をスタンダードとすることが不得意で損をしているという話を聞いたことがあります。ある分野におけるスタンダードとなると、それまでに開発した技術が有効利用できるので製品化に有利ですし、業界をリードしやすくなります。 優れた技術でも1社だけで使っていると「ガラパゴス化」してしまうおそれがありますが、複数社の協力で開発,利用すれば汎用性が高まり、スタンダードにしやすくなるのではないかと思います。 (3) 企業間の技術提携の橋渡しをする「仲介屋」のような会社もあるようです。提携可能な技術を登録し,欲しい技術を検索できる検索システムを提供する会社があります。また、もっと積極的に企業間の「お見合い」を取り持つ会社もあるようです。私は使ったことがないのですが、利用した方から話を聞いてみたいです。 (4) 将来の事業展開,市場動向などを考慮して、どのような技術が欲しいのか検討して提携する必要があります。目先の利益だけでなく長い目で将来を考えて、提携することのプラス面とマイナス面を考えなくてはなりません。 でも、言うことは簡単ですが、実際には難しいことですね。 (5) 下手をすると自社の大切な技術が安価で流出してしまうというリスクもあります。外部に出すべきでなかった大切な技術を提供してしまい、「自社だけの強み」を失って弱体化するおそれもあります。 確かに提携するには双方の歩み寄りが大切です。自社の利益だけを考えていては協力できません。でも「ここまでは譲歩できるが、これはダメ」と判断し、提携すべきでない場合は撤退する勇気も大切だと思います。 (6) 同じ技術でも違う会社の視点からみることによって おもわぬ用途が見つかることもあると思います。例えば「チョコレート製造の技術が、太陽電池の製造に役立つ」というようなこともあるかもしれません。 (7) 会社という組織を越えて他の技術者と交流できることは、技術者には刺激となると思います。全く違う業界の技術者から学ぶ機会も増えるのでしょうね。 (8) 外部との技術協力が有効といっても、やはり「技術の自給率」が高いことは強みです。技術導入に力を入れすぎて、自社の研究・開発の力が低下したのでは本末転倒になりかねません。 「オープンイノベーション」は「クローズドイノベーション」に取って代わるものではなく、ベースとしての自社の開発力の大切さは変わらないと思います。 |
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