「わかっちゃう! 知的財産用語 (特許,商標などの用語解説)」

さかな  わかっちゃう  知的財産用語
特許,商標,著作権 等に関する用語辞典 
さかな


孤児著作物(こじちょさくぶつ)

 
  孤児著作物 とは


 著作権者が不明であったり、著作権者の連絡先が不明な著作物のことです。

「孤児作品」や「オーファン・ワークス(orphan works)」と呼ばれることもあります。


(1)
 特許権や商標権のような産業財産権は登録主義のため、特許庁の登録原簿を確認すれば特許権者,商標権者やその住所を知ることができます。

 権利の譲渡があった場合も原簿に記録されているので現在の権利者を知ることができますし、権利の消滅を確認することもできます。


 それに対して著作権については登録主義ではなく、著作物の完成により権利が発生するため誰が著作権者なのかわからないことがあります。


 著作者が有名人ではない場合はもちろんのこと、有名な作家でもペンネームを使い分けて作品を発表しているような場合、著作者が誰なのか特定できないことがあります。


 また、著作者が わかっていても古い著作物になると著作者の消息がわからなくなり、存命中なのか亡くなっているのかさえ確認できない場合もあります。没年がわからないと、著作権が消滅しているのかどうかもはっきりしません。


 また、著作権は譲渡可能な財産権であり、譲渡により著作権者が変わります。そのため、現時点での著作権者が誰なのか不明となることがあります。たとえば、著作権者である法人が倒産し、その著作権の譲渡先が不明となるようなこともあります。



(2)
 他人の著作物を利用する場合には、原則として著作権者に利用の許可を求める必要があります。しかしながら「孤児著作物」については、利用の許可を求めたくても著作権者に連絡をとることができません。


 そのような場合でも無断で利用すると著作権侵害となってしまうことがあるので、勝手に利用してよいということにはなりません。結果として、孤児著作物の利用ができないという事態になってしまいます。



(3)
 このような場合、「裁定制度」を利用をすることが考えられます。

 著作権法では、権利の所在が不明な著作物の利用に際しては文化庁長官の裁定を仰ぎ、補償金を国庫に供託することで利用が可能とされています。


 しかしながら、裁定を受けるためには、単に「連絡先がわからない」というだけでなく、「権利の所在を探す為に相当の努力を行ったがその所在が掴めなかった」と認めてもらえなければ裁定を受けることかできません。

 そのため裁定制度は あまり利用されていないというのが実情だそうです。



(4)
 図書館などが所蔵している古い資料などの著作物をデジタル化してインターネットで公開して有効利用してもらおうとしても、孤児著作物が多くて公開できないことが大きな悩みだそうです。


 そこで、国立国会図書館ではサイト上で著作物に関する情報を募集する「公開調査」をしています。
  https://openinq.dl.ndl.go.jp/search



               ☆              ☆

[関連事項と経験談]

(1)
 個人的には孤児著作物については積極的にパブリックドメイン化を進めて、みんなが安心して利用できるような制度を整備してはどうかと思っています。


 人間でも消息不明だと「失踪宣告」されることがあるのですから、孤児著作物の著作権も一定の調査や手続きを経た上で権利消滅したとみなす「消滅宣告」のようなことをしてもよいのではないかと思えます。


 権利消滅宣告によるパブリックドメイン化は行きすぎだとしても、裁定の手続きや要件を簡単にして、裁定制度がもっと利用しやすいものになるとよいですね。



(2) 
 これも全く個人的な印象なのですが、「孤児著作物」の「孤児」という表現は、どうしても「戦災孤児」や「残留孤児」のような子供たちをイメージしてしまうのでドキッとします。

 せめて「迷子著作物」とか「放浪著作物」とか、もう少しソフトな表現にならないものかと思います。



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