「わかっちゃう! 知的財産用語 (特許,商標などの用語解説)」

さかな  わかっちゃう  知的財産用語
特許,商標,著作権 等に関する用語辞典 
さかな


警告書(けいこくしょ)


[ 警告書(けいこくしょ)]


 権利者が、権利を侵害していると思われる者に対して、訴訟を起こす前に、侵害行為の停止等を求めて送りつける書類のことです。



(1) 特許権や商標権者などの権利者は、権利を侵害する者に対しては訴訟をして、その侵害行為の差し止めや損害賠償を求めることができます。


 しかし、実際には日本では いきなり訴訟が始まることは少なく、その前に「警告書」を送って、相手の出方を見ます。



(2) 権利者は、警告書を送った後、相手からの返答を見て訴訟をするかどうか判断します。


 相手が侵害行為をやめることを約束した場合や、実施許諾を求めてきたような場合には訴訟に至らずに解決することが多いです。

(侵害行為を直ぐに停止すると約束しても、過去の侵害に対して損害賠償を求めて訴訟されることは有ります。)


 相手が警告を無視した場合や、反論してきた場合は、訴訟になることが多いです。

 しかしながら、相手の反論が強力で、訴訟しても負けそうな場合は、訴訟しないことが多いです。



(3)  警告書の書式は特に決まっていませんので、自由に作成されれば良いのですが、少なくとも
 「自分の住所,名称」、

 「自分の持っている権利の特定(例えば特許番号)」、

 「権利侵害していると思われる相手の製品,商品や行為等の特定」、

 「その行為が権利侵害と思われる旨」、

 「侵害行為の停止等を求める旨」、

 「返答を求める旨」、

 等を書きます。

 実際には、弁理士や弁護士に警告書の作成を依頼することが多いです。



(4) 実施契約をさせたい場合には、警告書に「実施許諾の用意もある」ことを書いておき、相手を誘導してライセンス契約の交渉に持ち込むことがあります。



(5) 警告書は、「内容証明郵便」で送られることが多いです。
 内容証明郵便には特許公報や商標公報などを入れることができないので、別に郵送することが多いです。


 只、必ずしも内容証明郵便でなければならないということではありません。書留,配達証明郵便などで送られてくることもありますし、最近ではEメールで送られてくることもあります。

 

              ☆                   ☆ 


[関連事項と経験談]


(1) 警告に用いられる書類の名称は必ずしも「警告書」とは限られません。

 「通知書」,「通告書」等と書かれていることもあります。



(2)警告書を受けたら次のような事を確認,検討する必要があります。
 (今回は、詳しくは説明しません。)

 (A) 警告していた者の権利が本当に存在するか確認する。

 (B) 権利が消滅していないかどうか確認する。

 (C) 権利内容と自社の実施内容とを比較して自社の製品や商品が本当に権利侵害になっているかどうかを検討する。

 (D) 自社に先使用権がないかどうか検討する。

 (E) 相手の権利を無効にできないか検討する。

 (F) 実施料(使用料)を払って実施許諾を受けることについて検討する。

 (G) 権利侵害と言われている製品の設計変更や商品名の変更などを検討す
   る。


 いずれにせよ専門家(弁理士、又は知的財産に強い弁護士)に相談される
ことをおすすめします。




(3) 警告書は無視せずに、きちんと返答しましょう。

 無視すると、権利者を怒らせて、訴訟に至る可能性が大きいです。

 「権利侵害ではない」と判断した場合でも、その旨を返答します。


 只、いい加減な返答を送ると、後に裁判で不利な証拠として扱われること
もありますので、注意が必要です。

 返答の内容も専門家と相談されることをおすすめします。



(4) 警告書には

「本警告書到達後14日以内に返答下さい。期限内に返答の無い場合は権利行使をする予定です。」

のように返答期限が決められていることが多いです。


 しかしながら、短期間でいろいろ検討できない場合もあります。

 そのような場合、とりあえず「検討にもう少し時間が必要なので、あと2週間待って欲しい」等の返答をしておくと待ってくれることが多いです。


 権利者もできれば費用や労力のかかる訴訟は避けたいと考えている事が多いからです。
(もちろん権利者によっては「問答無用」で訴訟してくる可能性は有りますが・・・)


 ただ、さすがに「3ケ月待ってください」のように、あまり長い期間だと待ってくれないと思います。



(5) 実用新案権の場合は、実体的な審査をせずに権利が発生しているために、相手に「実用新案技術評価書」を提示して警告した後でないと権利行使(訴訟)することができません。

「実用新案技術評価書」は特許庁に請求して作ってもらいます(有料です)。



(6) 企業に勤務しているときに他のメーカーから特許権侵害の警告書を受けたのですが、たいした内容ではなく不思議に思って相手に返答したら、相手の知的財産部から

「実は貴社と友好関係を作りたかったので、お話しをするきっかけとして警告書を出してみました」

と なんとも とぼけた事を言われて 驚いた事がありました。

 「友達になりたくてケンカを売る」という何とも屈折した考え方も有るものですね(^_^;)。

 ひょっとすると間違って(勇み足で)警告書を出してしまい、後から謝ることもできずに、わけのわからない言い訳をされたのかもしれません。



(7)警告書は 権利侵害をしていると思われる相手に直接送ります。

 相手の取引先や客などに「**会社の製品は当社の特許権を侵害しているので買ってはダメ」のような書類を送ると、営業妨害として問題になることがあります。



(8)出願公開後、権利化前に補償金請求権のために警告書を送ることもあります。
 (これは、また別の機会に説明略します。)




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