わかっちゃう! 知的財産用語 特許,商標,著作権 等に関する用語辞典 |
同日出願 (どうじつしゅつがん) |
同日出願とは、 同じ対象(例えば「発明」や「商標」)について同じ日に2以上の出願があること。 又は、その同日になされた出願のこと。 同じ内容の「発明」や、同一又は類似の「商標」について複数の出願がされる場合があります。 例えばAさんとBさんが別々に同じ発明をして特許出願するようなことが考えられます。 このような場合、もし全ての出願に権利を付えてしまうと同じ発明について権利が重複して発生してしまいます。(このような状態は「ダブルパテント」と呼ばれます。) 意匠権や商標権の場合も同様に、全ての出願に権利を付与すると権利が重複してしまうことになります。 特許権や商標権等は「独占権」ですので、同じ内容に複数の権利が発生することは好ましくありません。 そこで、特許,意匠,商標等の工業所有権については、「最初に出願した人に権利を付与する」という「先願主義」が採用されています。つまり、先に出願した人には権利が付与され、後から出願した人には権利は与えられません。 「特許や商標は 早いもの勝ち」と言われるのはそのためです。 ここで、「先」か「後」かは、どちらの「出願日」が早いかで判断します。1日でも早ければ「勝ち」で、1日でも遅ければ「負け」ということになります。 この場合、「日」で判断しますので、同じ日に出願があると「先」,「後」の優劣がつけられません。(仮にAさんが午前11時に出願し、Bさんが同じ日の午後5時に出願したとしても「同じ日」に変わりはないので優劣はつきません。) 同日出願の場合の取り扱いですが、特許庁長官は両方の出願人に「協議」するように命じます。 出願人は協議して権利を受ける出願人を決定し、その結果(つまり権利を受ける出願人の特定)を特許庁長官に届け出ます。この届け出ができる期間は特許庁長官が決めます。 出願人は他の出願人と協議することになりますが、どちらも特許権が欲しいので、簡単に自分が権利を受けることをあきらめるわけにはいきません。 しかし特許出願の場合、もし協議が成立しない場合はどちらの出願も特許を受けることができなくなります。つまり、出願人がどちらも意地を張っていたのでは協議が成立せず、どちらも権利を取れなくなってしまいます。 それでは困るので、たいていの場合は妥協してどちらか一方の出願を取り下げて、他方の出願を両者の共同出願にすることが多いです。 例えば先述の例ですと、Aさんの出願を取り下げて、Bさんの出願をAさんとBさんの共同名義にします。そうすれば出願は1つになるので「同日出願」の状態は解消されます。 この場合、どちらの出願を取り下げてどちらの出願を残すかは、両者で話し合って決めます。通常は、書き方などで「出来の良い」方の出願を残します。 商標の場合は、扱いが少し異なります。 特許庁長官が両方の出願人に協議するように命ずるのは同じなのですが、協議が成立しない場合の扱いが違います。 特許出願の場合は、協議不成立なら「どちらも権利が取れない」のですが、商標登録出願の場合は特許庁長官の行う「くじ」によって決められます。つまり、「くじ」で当たった人に商標権が付与され、「はずれ」の人は商標権を受けられません。 尚、「特許庁長官が行う」と言っても本当に「長官」ご本人が「くじ引き」をするわけではなく、特許庁の一室で特許庁の職員が行います。 * * [関連事項と経験談] (1) 「同じ出願人」が同日出願をした場合にも同様の扱いとなります。例え同じ人にでも同じ内容について複数の権利を認めるべきではないからです。 (2) 私も企業に勤務していたときに特許の同日出願の経験が有ります。相手は大手電器メーカーのグループ会社でした。 会社にとって大切な発明でしたので特許庁からの協議命令を見たときには「もし出願が1日でも遅れていたら会社の損害は大きかっただろうな」と思って「ゾッ」としました。 協議をするために会社を代表して私が1人で相手会社に出向いたのですが、ライバル会社ですので緊張したことを覚えています。当時私は29才、相手会社の特許部長は50才くらいで、しかも相手の会社での交渉ですので「敵陣に単身乗り込んだ」ような気分でした。 幸い話しはすんなりとまとまり、一方の出願を「共同出願」とすることで話しがつき、安心しました。その後は、どちらの出願を残すかといった検討を一緒にしました。 (3) 私は商標登録出願の同日出願については1回経験が有りますが、その時は色々話し合って協議が成立しました。この場合は一方の出願を取り下げる代わりに、登録後に商標権を分割移転することで話しがつきました。 協議不成立の場合の「くじ」については経験したことがないのですが、経験した弁理士に聞いたところ、商店街の歳末抽選会で使うような「ガラポン」と呼ばれるグルグル回して色の付いた玉が出てくる抽選道具をつかって「くじ」を行ったそうです。 その弁理士は出願人の社長と一緒に「くじ」に立ち会ったらしいのですが、めでたく「くじ」に当たり、その社長は飛び上がって「やった!」と叫ばれたそうです。気持ちはよくわかりますね。 私も一度立ち会ってみたい気きもしますが、「はずれ」だと気まずい雰囲気になりそうで怖いですね。 |
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