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実用新案 (じつようしんあん)


 実用新案とは、

 物品の形状や構造などについての考案(小発明)を保護する制度です。

 実用新案法により独占権である実用新案権を付与することで保護をします。


 独占権を与えて「技術的思想の創作」を保護するという点では特許制度と似ていますが、次のような違いがあります。


(1)保護対象

 特許は「発明」を保護し、実用新案は「考案」を保護します。「考案」は「小発明」とも呼ばれ発明よりも少しレベルの低い技術的創作とされています。但し、レベルの高い低いは概念的なものなので、実際にはあまり深く考える必要は有りません。


 一番大きな違いは、実用新案法で保護される「考案」は「物品の形状、構造又は組み合わせに係る考案」に限定されると言うことです。


 したがって、「**の製造方法」のように方法に関する考案は実用新案法では保護されないので、保護を受けようとすると特許により保護することとなります。
 一方、「**装置」のような「物品」の構造などに関する考案や発明は実用新案でも特許でも保護することができますので、どちらでも出願することができます。


(2)権利期間

 特許の存続期間(権利が生きている期間)は原則として出願後20年です。一方、実用新案の存続期間は出願から10年です。したがって、長期間の保護が必要なら特許出願した方が有利となります。


(3)審査

 特許は出願すると内容の実体審査(新規性,進歩性などの要件の審査)を経て登録され特許権が発生します。審査をする時間がかかるため、特許権が発生するまでに原則として出願から2年近くかかります(出願後に出願審査請求が必要です。早期審査,優先審査等の制度を利用すれば審査期間は短くなります)。


 一方、実用新案の場合、実体審査を経ずに出願後3月くらいで登録され実用新案権が発生しますので、とにかく早く権利化したい場合は実用新案の方が有利です。



(4)権利行使

 特許権は上記のように審査を経て発生していますので、侵害行為があればすぐに権利行使(差止請求や損害賠償請求等)をすることができます。


 一方、実用新案権は審査を経ずに発生しているので、権利内容が特許権に比べて不安定です。そこで、特許庁に「実用新案技術評価書」を作成してもらい、侵害していると考えられる相手に「実用新案技術評価書」を提出して警告をした後でないと権利行使することができません。つまり、権利行使する前に特許庁に評価してもらう必要があります。

 したがって、権利の安定性という点では特許の方が有利となります。


 又、今回は詳しく説明しませんが、実用新案権に基づいて警告や権利行使した後に、その実用新案登録が無効となった場合には相手方に与えた損害を賠償しなければならない場合もあります。


(5)料金

 実用新案の方が特許より少し安いです。但し、実用新案の場合は出願時に登録料(3年分)を前払いするので、出願時だけで比較すると実用新案の方が必要な費用は高いです。

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[関連事項と経験談]

(1) 特許相談をしていると「アイデアを保護したいのです特許か実用新案かどっちがよいでしょう?」という相談を受けることがあるのですが、上記したような違いを考慮して決められれば良いとアドバイスしています。


 一般に、「おもちゃ」のように流行性がある物や模倣されやすい物については、すぐに偽物が出回ると共に、流行が終われば売れなくなるという商品特性があるので、存続期間が短くても権利化の早い実用新案の方が有利だと思います。

 それ以外の場合は、権利の安定性や存続期間の点から特許の方が有利だと思います。


(2) もともと実用新案の制度は「技術力が欧米に対して弱かった当時の日本において、産業を保護するために発明にまで至らない小さな考案でも積極的に保護しよう」という趣旨で始まったといわれています。


(3) 「同じような制度が2つ有ってもあまり意味がない」という理由で現在のように改正されましたが、改正前の実用新案法では特許の場合と同様に審査をしてから権利を付与していました。






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