さかな  わかっちゃう  知的財産用語
特許,商標,著作権 等に関する用語辞典 
さかな


ダイリュージョン


ダイリュージョンとは、

 著名な商標について、他人が本来の商品以外に使用することによって、その商標と本来の商品や商人とのつながりを認識させる力を弱くさせてしまうことです。

 「商標の稀釈化(きしゃくか)」ともいいます。



 商標というのは商売をしている特定の人が商品やサービスに使っている名称やマークですが、著名な商標はそれを見聞きするだけで、特定の商品又は商人をイメージさせます。


 しかし、本来の商品やサービス以外にも 使われていくと そのような本来の商品や商人とのつながりを認識させる力が弱まり、商標の持つブランド価値が低下します。


 更に、商標が 同種の商品についても広く使われてしまうと、商標が一般名称化してしまうこともあります。


 ホッチキス、セスナ、ジープ、ナイロンなどの言葉を無意識に一般名称として使っている方も多いのではないでしょうか(これらは本来、商標だったり会社名だったりします)。


 一般名称化しやすいのは今までにない目新しい商品や、ヒットした商品の名称であることが多いです。今まで普及していなかった商品なので、販売者も購入者もその商品だけでなく他の類似商品も同じ名前で呼んだりすることが多いからだと思います。



 本来は登録商標であっても、管理をしっかりしないとダイリュージョンによって価値が下がってしまいますので注意が必要です。


 ダイリュージョンを防止するための商標管理としては下記のような手段があります。

(A) その名前が商標であることを認知させる。

 「正露丸は**の登録商標です」というCMを見られた方も有ると思います。あれはメーカーが「正露丸」という商標が一般名称化するのを防止するために行っています。


(B) 他の商品やサービスに商標を 使っている者に対して、正しく使うよう指導する。

 例えば、小型のカセットテーププレーヤーでソニーさんの「Walkman」という商品が一世を風靡した時期がありました。このころ、家電小売店や大手スーパーではチラシにソニー製以外の小型カセットプレーヤーについても「Walkman」や「ウォークマン」と書かれているのを何回か見かけたことがあります。

 あの頃はソニーさんでは他社の類似商品のことを「Walkman」と呼ばないで欲しいということを指導するのが大変だっただろうと思います。


(C) 自社が使用しない商品について、他人に商標登録されないように、「防護標章登録」をしておく。


            *                      *


[関連事項と経験談]
 
(1)ずいぶん昔のことですが、私の知人が就職面接でカシオさんに行きました。面接官から「当社のどの商品に興味がありますか?」と聞かれた知人は何も考えずに「エレクトーンです。」と答えてしまいました。すると面接官の方は一瞬の沈黙の後に「エレクトーンはヤマハさん、うちはカシオトーンだからね」と優しく教えてくださったそうです。

 ちなみにその知人は公務員になってます(やっぱり面接落ちたのか?)。


(2)海外でも私たちからみるとユニークな商標の一般名称化が有ります。

 オートバイのことを「ホンダ」と読んでいる国がありますし、確かアメリカでもTVゲームのことを「ニンテンドー」と読んでいるらしいです。

 そういえば、「メン イン ブラック」という宇宙人がたくさん出てくる映画を見ていると登場人物が「ニンテンドー」がどうしたこうしたと会話しているシーンがありました。その時の字幕には「プレステ」と訳されていました。

 なぜ「プレステ(ソニーさんのTVゲームの名前)」と訳したのか不思議に思っていたのですが、映画好きの友人に聞いたところその映画の配給元がソニーさんの関連会社だからだそうです。 なるほどね。



(3)特許出願の際に提出する書類には原則として登録商標は書いてはならないことになっています。登録商標を書いていると特許庁が補正を求めてきます。


 どうしても登録商標を書く必要がある場合は、それが登録商標であることを明確に示しておくことが求められます。ですから、特許の書類を書くときは結構気を使います。

 特許の書類を書く機会がある方は、一度1日中商標を全く使わずに生活してみることをお勧めします。その日は全て一般名称で呼ぶことにします。それでもたぶん無意識に商標を使ってしまうと思います。指摘してくれる人が周りにいるとゲーム感覚で楽しいですよ。商標に対するアンテナは確実に鋭くなります。


(4)通信販売を利用すると「宅急便で送ります」と書かれているのに「ペリカン便」や「飛脚便」で送ってくることが有りますね。ご存じだとおもいますが「宅急便」は「ヤマト運輸株式会社」さんの登録商標です。

 昔「魔女の宅急便」というアニメ映画が有りましたが、あれはヤマト運輸さんがスポンサーだったんですね。



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