さかな  わかっちゃう  知的財産用語
特許,商標,著作権 等に関する用語辞典 
さかな


クレーム


  クレームとは、

 特許出願の際に記載する 「特許請求の範囲」 のことです。

 特許出願する際には、どのような発明について特許権を求めるのかを示す必要があります。そのときに出願人が権利を求める発明がどのような構成であるのかを「特許請求の範囲」に記載して発明内容を特定します。


 つまり特許請求の範囲には保護を受けたい発明の構成要素を書くことになります。
 例えば、「A」と「B」と「C」と「D」という発明の構成要素を備えたことが特徴となる冷蔵庫についての発明であれば、
 「AとBとCとDを備えたことを特徴とする冷蔵庫。」のように書きます。


 特許権が発生した際には、この特許請求の範囲に書かれている内容が権利範囲を定める基礎となります。つまり、特許請求の範囲の書き方次第で特許権の権利範囲が変わってくるのですから、この部分の書き方はとても重要です。


 プロである私たち弁理士にとっても特許請求の範囲の書き方は難しく、本当に「一生勉強」です。実際に1件の特許請求の範囲を書くために何日も悩むことがあります。

 「クレームの書き方」ということになると、1冊の本にもまとめきれないくらいの内容ですし、このメルマガの趣旨とは異なるので、今回はそこまで説明しません。


           *                      *

[関連事項と経験談]

(1) 「クレーム」というと、一般的には「苦情」とか「不満」の申し入れをイメージしますよね。

 私も企業の特許部に配属され、上司から「クレームを書いてみろ」と言われたとき「何言ってるんだろ?上司への文句が有ったら書けということかな?ホントに書いて良いの?」と思いました。
 (このときは確認したので「上司への苦情」は書かなくてすみました。)


(2) 特許請求の範囲は、以前は「明細書」という書類の一項目だったのですが、昨年(2003年)から形式上、独立した書類となりました。(明細書についてはまた別の機会に説明します。)


(3) 特許の出願書類を読むときに公報では特許の請求の範囲が最初の方に掲載されているのですが、読む順番としては最後に読むことをお勧めします。

 特許請求の範囲の記載は、権利範囲を制限しないように広い概念の言葉を使っているので、最初に読んでも理解しにくいのです。又、特殊な言い回しや、1つの文章が切れることなく続いたりすることが多いことも読みにくい原因となっています。

 明細書の「実施例」の欄には具体的な例が書かれていますので、明細書を一通り読んだ後に特許請求の範囲を読むと比較的わかりやすいです。


(4) 発明者の方は、自分が色々考えた中の最良のアイデアを持ってこられます。でもそのために視野が狭くなっていることが多いです。例えば用途や材料や配置や数量などを必要以上に限定して考えておられる傾向が多いように思います。(特に、試作品や製品の内容に引きずられているケースをよく見かけます。)それでは権利範囲が必要上に狭くなるので勿体ないですよね。


 クレームを書くときは、「何が発明の本質(骨子)であるのか」をよく考えて、できるだけ広い範囲で権利が取れるようにする必要があります。(言うのは簡単ですが本当は難しいです。)


 特許事務所によって対応は異なると思いますが、私の場合、発明者が必要以上に発明内容を限定解釈していると思った場合は、発明者に質問をします。


 例えば、「**の形が三角形と言われていましたが、四角形や五角形ではダメなんですか?」のような質問をして限定が本当に意味のあるものであるか確認します。

 このような質問をしているうちに、「三角形」と表現するより「多角形」と表現した方が好ましいと判断されることもあります。



(5) 特許権者から警告を受けたような時は、まず、その特許権について特許請求の範囲がどのような内容であるかを確認する必要が有ります。

 只、特許請求の範囲の記載内容も一定範囲で出願の後に補正することができます。そのため、出願時や公開時の内容と、特許権が発生した時点の内容とでは異なっていることがあるので注意しましょう。




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