「わかっちゃう! 知的財産用語 (特許,商標などの用語解説)」

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特許,商標,著作権 等に関する用語辞典 
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[早期審査(そうきしんさ)] (商標関係)


 [早期審査(そうきしんさ)] (商標関係)



 自分の出願について、他の出願より優先して早く審査してもらうことができる制度です。




(1) 特許出願についても早期審査の制度がありますが、今回は商標登録出願についての早期審査について説明します。



(2) 商標登録出願をすると、審査官が審査をします。


 審査で登録できると判断されると登録査定謄本が送達されてきます。その後、所定期間内に登録料を納付すると商標が登録され、商標権が付与されます。


 この審査に要する期間は決まっていないのですが、私の経験では出願日から半年程度で最初の審査結果(審査官が登録できると判断した場合は「登録査定謄本」、審査官が登録できないと判断した場合は「拒絶理由通知」)が通知されることが多いです。


 早い場合だと出願日から3ケ月程度で審査結果の連絡があることもありますが、反対に遅い場合だと出願日から1年以上経過しても何の連絡もないこともあります。


(尚、審査期間は指定する商品や役務の範囲によっても変わってくると思います。指定する範囲が広いと、それだけ広い範囲で登録可能かどうかの判断が必要となるからです。)




(3) 特許庁内部の事情は知らないのですが、指定した商品や役務に応じて、いくつかの部署に出願を振り分けて、原則として出願順に審査しているのだと思います。


 でも、特定の出願を他の出願よりも優先して(早く)審査した方が、産業政策上好ましい場合もあります。


 そこで、権利化について緊急性を要する商標登録出願については、優先的に審査を行う早期審査の制度が設けられています。




(4) 早期審査の対象となる出願
 
 以下の2つの要件を「両方」備えた商標登録出願が早期審査の対象となります。


 (A) 出願人自身又は、出願人が使用を許諾した者(ライセンシー)が、出願した商標を指定商品若しくは指定役務に使用しているか、使用の準備を相当程度進めている出願であること。


 (B) 権利化について緊急性を要する出願であること。



 上記(A)の条件において、「商標の使用の準備」というのがどの程度のものかわかりにくいかもしれないので少し補足しますと、かなりの具体性が必要となります。


 つまり、漠然と「近い内に使いたいなー」と考えている程度では「準備を相当程度進めている」とは認められません。


 「使用開始時期(少なくとも、早期審査の申出から3月以内)」、「予定している使用商品又は役務」、「使用場所」等を明確にして、その準備が相当程度進んでいることを示す書類を提出する必要があります。


 その「相当程度進んでいることを示す書類」としては、

 「指定した商品(役務)について使用をする商標の印刷を印刷会社に発注したことを示す書類」

 「商標が付された指定商品(指定役務)のカタログ、パンフレット等を印刷会社又は広告会社に発注したことを示す書類」

 などが考えられます。



 上記(B)の条件において、「権利化について緊急性を要する」というのは下記のような場合とされています。


 (ア)第三者が許諾なく、その商標又はその商標に類似する商標を出願人若しくはライセンシーの使用若しくは使用の準備に係る指定商品若しくは指定役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用しているか又は使用の準備を相当程度進めていることが明らかな場合。


  文章を読むだけではちょっとわかりにくいと思いますが、例えば、

  「出願中の商標を使って、他人が模造品を作っている」

  ような場合などが考えられます。



 (イ) 出願商標の使用について、第三者から警告を受けている場合。

   (早く審査結果が出れば、係争の早期解決に役立つ場合があります。)



 (ウ) 出願商標について、第三者から使用許諾を求められている場合。

   (早く商標登録を受けて、正式にライセンス契約したいですよね。)



 (エ) 出願商標について、出願人が日本国特許庁以外の特許庁又は政府間機関へも出願している場合。

 (オ) その他、権利化について緊急性があると認められる場合。


 
2009年2月から運用が少し変わり、上記に加えて

「出願人またはライセンシーが、出願商標をすでに使用している 商品・役務又は使用の準備を相当程度進めている商品・役務のみを指定している出願」

 も対象に含まれることになりました。
 詳しくは こちら。   




(5) 早期審査の適用を受けるための手続


 早期審査を申し出る際には「早期審査に関する事情説明書」を提出します。


 「早期審査に関する事情説明書」には、出願番号などの他に、早期審査制度の対象となる商標であること、具体的には

  「出願人等の使用状況説明」,「緊急性を要する状況の説明」

 などを記載します。



(6) 審査

 「早期審査に関する事情説明書」の提出があった商標登録出願について、早期審査の対象とするか否かは特許庁の審査長等が選定します。


 選定の結果、早期審査の対象となった商標登録出願については、通常出願よりも優先して早く審査を開始し、審査の手続きも遅滞なく進められることになります。


 一方、選定で「対象としない」と判断された場合は、特許庁から出願人に理由を示した通知があります。

 この場合は、早期審査ではなく、通常通り審査されることになります。




(7) 詳しいことは特許庁の

   審査業務部 商標課調査班03-3581-1101(内線2805)

   にお問い合せ下さい。



              ☆                 ☆


[関連事項と経験談]

(1)  「早期審査に関する事情説明書」を提出について印紙(特許庁に納付する手数料)は必要ありません。


 但し、「早期審査に関する事情説明書」の作成などを特許事務所に依頼した場合、書類作成費用が必要となると思います(詳細は依頼先の事務所にご確認下さい)。



(2) 出願が審査で拒絶された場合、その審査結果に不服な出願人は「拒絶査定不服審判」という審判を請求することができます。


 この「拒絶査定不服審判」では「早期審理制度」があります。この制度を利用すれば、審査における早期審査の場合と同様に、通常の審判事件よりも早く審理を開始して審判手続きを遅滞なく進めてもらうことができます。



(3) 近年では10年前と異なり、比較的審査も早くなりましたし、「早期審査に関する事情説明書」を作るのもそれなりに手間がかかるので、実際にはあまり早期審査を利用する機会は無いと思います。


  でも、本当に緊急な場合もあることを考えると、このような制度があるのは助かります。



(4) 審査期間に関する余談

 以前、商標登録出願が、出願後1年以上経っても特許庁から何の通知,連絡もなく、心配になって特許庁に審査状況について問いあわせたことがありました。


 電話では返答をいただけず、「審査状況伺書」を提出するように指示されました。これはEメールで提出することもできましたので、すぐに提出しました。


 それから1ケ月経過後に「その出願については近日中に審査結果の連絡がある」旨が書かれた書類が送られてきました。そして、その1ケ月後くらいに審査結果の連絡が有りました。


 指定区分が1区分のシンプルな出願ないのに、どうしてその出願の審査に1年3ケ月もかかったのかは、特許庁内部のことなので私には全くわかりません。(大きな組織の中のことですから、いろいろあるのでしょう。)


 「審査状況伺書」を出していなければ、審査にもっと長期間かかっていたかもしれません。

 出願後、1年位経っても審査結果の連絡がない場合、私のように一度「審査状況伺書」を出してみるのも良いかもしれませんね。


 それにしても個人的には、「**伺書」という名前は、「下の者が偉い人に、ご意向を拝聴する。」っというようなイメージがあって、あまり好きな名前ではないです。「問い合わせ書」くらいの軽い名前でも良いと思うのですが・・。




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