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職務発明  (しょくむはつめい)   PART2


 [職務発明 (しょくむはつめい) ] PART2

  今回は職務発明の「対価(たいか)」についてのお話しです。

  PART1を 読んでおられない方は こちらをご覧下さい。


                 ☆                ☆


 最近職務発明に関してよく話題になるのが、この「相当の対価」の問題です。最近でも裁判で億単位の対価を従業者に支払うことを認める判決が出て話題になっていましたね。


(1) 会社によって対価の払い方は色々有ると思いますが、私の知る範囲では

(A) 出願補償金    出願時に支払う。
(B) 登録補償金    特許になった時に支払う。
(C) 実績補償金    特許権により利益が出たときに支払う。

に分けて支払っていることが多いと思います。


 対価を上記のように分けて考えた場合、「出願補償金」と「登録補償金」は問題となることは少ないです。額も数千円から数万円程度の会社が多いのではないかと思います。この時点ではまだ発明があまり利益を出していないからです。
 (只、最近は以前より少しは増えてきたようです。)


 問題は「実績補償金」です。対価を決める際には使用者の受けた利益を考慮する必要があります。

 その対価の定め方に使用者と従業者との間に大きな隔たりがある場合に訴訟に発展することがあります。訴訟はほとんど、「対価が少なすぎる」とする従業者や元従業者が使用者を訴えます。



(2) 実際には対価の額の決定はとっても難しいです。

 ある発明を使った商品がたくさん売れて利益が上がったとしても、どの程度がその発明の貢献による利益かはわかりにくいのです。

 例えば発明の内容よりも営業努力によりたくさん売れたのかもしれません。

 又、ある発明を使った1台1000万円の装置が売れたとします。そして発明はその装置に使われている1個10円の部品についての発明だったとします。
 すると、「安い部品の特許」ということで対価は少ないと評価されることもあるでしょうし、「その部品を使っているからこそ1000万円の装置が売れた」と考えて対価が高く評価されるとこもあるでしょう。


 厄介なのは1つの製品に複数の発明が使われている場合、どの発明が利益にどの程度貢献したのかを判断するのは大変です。1つの製品に10個以上の特許発明が使われるいることなんて良くある話しです。


 又、発明を使った製品の売上げだけでなく、発明の存在により市場でライバル社より優位に立てたような場合は、その事も考慮する必要があります。

 もちろん特許発明の実施料も考慮します。

 以前紹介したクロスライセンスの場合、自社の特許権があるおかげで他人の特許権を無償又は安価に実施できますが、その貢献も配慮する必要があります。


 更に、使用者が発明されるまでにどの程度貢献したか、例えば設備や資材の額なども考慮して決めなくてはなりません。

 ねっ、頭が痛くなるでしょ。


               ☆                     ☆


[関連事項と経験談]

(1) このような職務発明に関する規定は企業活動に支障が出るので見直そうとする意見と、発明者を保護して発明を奨励する規定なので維持すべきだという意見があちらこちらで出ていましたが、特許法の改正がありました。


 職務発明に関して改正が予想されるのは主に対価に関する取り扱いです。

 詳しく知りたい方は特許庁のホームページを参照してください。

 改正の内容を大雑把にまとめますと、

 対価の額については従業者と使用者との「合意」を尊重し、合意がない場合や合意に「合理性」を欠く場合は裁判で判断することになります。

 でもその「合理性」の明確な基準が明確でないので、今度は合理性の有無の判断が問題となるのでしょうね。

 それと個人的に心配しているのは「合意」についてです。 発明者である従業者が本当に納得した「合意」をできるのかが気になるところです。
 「大きな額を要求して経営者に嫌われて左遷されないか」とか「会社に居づらくなるのでは」と心配になって十分な主張ができない従業者もいるかもしれません。

 いずれにせよ、対価をめぐる裁判は今後も無くなりそうにないですね。


(2) 中小企業では職務発明の社内取り扱い規定を作っていない会社もあります。その場合、原則通り発明者が特許出願して特許権者となります。

 ここ数年、中小企業でも社内取り扱い規定を作ろうとしている会社が増えてきたようで、社会保険労務士さんから職務発明についてのアドバイスを求められることが多くなってきました。


(3) 時々 対価のことを 「使用者から従業者へのご褒美」のように思っている経営者の方がおられますが、対価は「使用者の気持ちとして従業者にあげるご褒美」のようなものではなく特許法で定められた従業者の「権利」ですのでお間違えなく。


(4) 職務発明について発明者が知的財産部門に届け出ても、内容によっては特許出願に至らない場合が有ります。そのような場合でも、特許を受ける権利を譲り受けた使用者は従業者に(たとえ僅かでも)対価を支払うべきだと思うのですが、実際は出願されなかったものについては支払われていないことが多いようです。

 会社が出願せず、対価も払わないなら、特許を受ける権利を従業者に返して自由に処分させるべきだと思うのですが、そういう扱いをしている会社ってどのくらいあるんだろう?


(5) 対価は会社を辞めた退職者(元従業者)にも支払う必要があります。私が企業の知的財産部門にいた頃は現金書留で家に送っていました。そして、領収書にハンコを押して送ってもらっていました。

 本人が亡くなられている場合もあり、その場合は相続人である家族の方にお支払いしていました。  退職後、引っ越されて移転先不明で帰ってくることも有って困りましたね。


(6) 実用新案についての「職務考案」、意匠登録についての「職務創作」は、「職務発明」とだいたい同じように考えればよいです。

 著作権についての「職務著作」は扱いが大きく異なりますが、これについては機会が有ればまた別に説明します。



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